第9地区を観た感想。

ずっと気になっていた、第9地区を借りてきました。

皆がおもしろいおもしろいと言うので…。

ざっくりとした感想を書くと、

確かに非常に面白いです。面白いというより興味深い、衝撃的な内容。

簡単に言うと、人間のエゴを描いたSF作品だと思います。強烈な風刺で揶揄ではないかと。

民族紛争、戦争、差別、社会問題。全てを内包し、エイリアンを題材として描きあげた、そういうニュアンスがあります。

たとえば、これが世界史に名高い列強の植民地争いみたいなものだとしましょう。

そうしたら、エイリアンは遠い見知らぬ国の、見た目が自分とはるかに異なる異国人(ただし、映画では「国ならともかく惑星外から来たんだろ!」っていう痛々しいセリフがあります。私につっこませてもらえれば、国も惑星も似たようなもんww)。見た目のために「エビ」と呼ばれるのは、むしろ昔はよく異国の人間を肌の色で呼んだりした(今でもそうだが)と似たようなもんです。

そして彼らは、リーダーを失うと暴力化した。これを鎮圧するために、先進国が居住区を作って移動させた。これも世界史、および未だにあるパレスチナ問題と通じるものがあります。

そして支配される側が荒れ、スラム街を作り、暴徒化し、ちょいちょい反乱しては支配側に鎮圧される。

支配側は笑いながら「お前らを殺すのは最高に楽しい」と言う。

まさに、植民地支配と戦争です。

そしてあろうことか、エイリアンに関係なく、人間側も分裂し、人間同士で同志撃ちを始める。もう戦争そのままです。

SFによくある展開ですが、主人公が今度はエイリアン側に回り、人間に追われたり、残酷な実験の対象にされたり…と皮肉な展開です。

確かに主人公は観客があきれるくらい、嬉々としてエイリアンの卵を笑顔で焼き払ったり、お菓子でつろうとしたりなど、かなり馬鹿にした行動をとっているので、そのくらいの罰は受けてもいいのかもしれません。

でも自分が主人公の立場に立たされたら?「私はあんな馬鹿なことはしないよ」と思っていても、どうしても主人公の行く末が気になってしまいます。

おそらくあの主人公を好きになれる人はあまりいないでしょうが、それも計算されているように思います。ああ、あいつ馬鹿だな。でもやっぱりかわいそう。どうなるんだろう。と思って、最後まで見ずにはいられない。

かなりふざけた感じでスタートして、最後綺麗にまとめたなあと思う映画でした。エンディングはかなり好きです。ちょっと切なくていい。

みんな登場人物がどこかアホなんだけど、どいつも悪いしどいつも憎めない。

ただ、戦争や差別が人間を恐ろしい悪魔に変えるんだなっていうのは伝わってきました。