謎すぎる映画「トーク・トゥ・ミー」Talk to Me(2022)

映画トーク・トゥ・ミー イメージ画像

表向きは、都市伝説に巻き込まれて酷い目に遭う女性の話だが、それは実は奥深いもので、主人公は決して被害者ではないと思っている。彼女の選択が、自らを悲劇に追い込んでいくのだ。しかも周りに多大な迷惑をかけながら。

この映画は単なるホラー映画に見えて、非常に謎が多く、何度か見てみたがいまいちわからない点が多かった。その中でも特にわからない部分を考察してみたいと思う。

母親の死因が結局わからない

主人公が母親を愛していて、その母親が謎の死を遂げた後から、話は始まる。

だがこの母親の死因が自殺なのか正直最後までわからない。本人の霊は否定している。

冒頭を見返すと、この呪物(手の形をしている)に取り憑かれた弟が、兄を刺すシーンが出てくる。この時、「身内が本物でない」と疑っているセリフが差し込まれている。

主人公もこの手を握って降霊をしたあたりから、父のことを疑い始める。

しかし、父の「母が残した手紙を読み上げる」シーンにあまり嘘偽りがなさそうなのに、母の霊は「あれは嘘だ」と言い続ける。

ではこれは何を指し示しているのだろうか?

想像だが、あの手を握ってしまった時点で人は悪霊に取り憑かれ、狂ってしまうのだろう。そして人によっては元に戻れなくなり、効果が持続する。

母は娘を巻き込もうと何度も現れるが、それが幻想なのかどうかはわからなかった。ただ、主人公は明らかに母親に操られそうになっている。

あの感じだと父親は無実である可能性が高い。

憶測ではあるが、あの母親の霊自体が操られているか、本当は母親の霊ではないかもしれない。

ライリーはなんのためにあんなに酷い状態にされたのか

ライリーは手を握って降霊した時、地獄に引き摺り込まれ激しい自傷行為を始めた。おそらくは、死んだ方がマシだと考えたのだろう。

想像以上にやばいので、グロいシーンが苦手な人には絶対おすすめできない。しかもライリーが一番若いのだ。若いから狙われたのだろう。そのくらいしか理由が思いつかなかった。この後、刺された兄に話すと「子供にやらせたのか」と咎められる。子供は狙われやすいのかもしれない。よく小さい子だけが見える霊などは昔からある話だ。

母の霊は、「ライリーを助けろ」という。

ここで冒頭の、主人公ミアが死にかけのカンガルーを見捨てるシーンが頭をよぎる。

ミアはこのカンガルーを楽にしてあげられない。この時ライリーが「だけどあのカンガルー、とても苦しんでいたよ!」と訴える。

最後にミアは「落とし前をつける」のだが、その終わり方が一番ホラーであった。なぜか、誘導した母親は向こう側で待機していなかったのだ。やはり幻想なのだろう。ミアを釣る「エサ」だ。

私に言わせれば、あの「手」は呪いを拡大する呪物だ。犠牲者はどんどん増えていく。

結局助かる方法はなさそうだったが、おそらくライリーはあのあと助かる。それが「見えて」いたからだ。つまりミアは犠牲になったのだと思う。

主人公ミアが渇望したもの

ミアは繰り返し「一人にしないで」と周りにかまってちゃんムーブをかます。

母親との楽しかった動画を見返している。寂しくてたまらないので、元彼にも擦り寄るしで大変だ。

もしその寂しい心が「母」を呼び寄せたのだとしたら?

一番死に近いところにいたのはミアなのかもしれない。父はミアを心配していた。だけどミアはいなくなった母親のことばかり、気にしている。

悪霊にとっては格好の餌だった。

もしミアが、「生きている人間」「特に父親」をもっと頼っていれば、こんな酷い目には合わなかったかもしれない。

そう思うと、単なるSNSの批判だけでなく、生きている今を大事にしろと言われている気がした。